ストーリーテリングについて語るブログ

愛されるお客さんになる 〜NYで気づいた「与える」関係づくり〜

前回のブログ「選んでもらう人になる」では、お店側の視点から「なぜその他大勢の中から特定の人が選ばれるのか」、そして「それを日常生活で応用するコツ」についてお話ししました。

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今回は、その続編としてお客側の視点から書いてみたいと思います。

お店側が私たちを覚えて特別扱いしてくれる。それは確かに嬉しいことです。でも、そこで終わってしまっては「一方通行」の関係になってしまいます。

本当に良い関係を築くためには、お客側からの「GIVE」も大切なのです。

私のニューヨーク生活で気づいた、そのお店にとって「良いお客さん」でいるための工夫。そして、お店側とお客側の気遣いが重なった時に生まれる「ブースター効果」について、実体験をもとにお伝えします。

 

前回の復習:なぜ、選ばれるのか?

前回ご紹介した、お店側が使う「選ばれる人」になる技術は以下の3つでした:

  1. 相手の顔と好みを覚えている
  2. 一言プラスの会話を心がける
  3. 次回につながる言葉を残す

私のコーヒースタンドの通うモンゴル出身の店主は、毎日100人以上のお客さんと接するのに、私を覚えていてくれました。そして「いつものミルク入りコーヒ」を先回りして準備してくれるようになったのです。これはその前に通っていたスタンドやカフェでも同様でした。

でも、この関係をより深く、より持続的なものにするためには、お客側からの「お返し」も必要です。

「良いお客さん」になる3つのコツ

1. できるだけマメに通う

一番シンプルで、一番効果的な方法です。

私は最初、出勤時にたまに通う(週に1回程度)利用でした。でも、店主が私を覚えてくれるようになってからは、意識的に足を向ける回数を増やしました。可能な限り、出勤時は毎回通うようにしたのです。

なぜか?単純に自分を認識してくれることが嬉しかったからです。自分のことを覚えてくれて、先回りして好みのコーヒーをサーブしてくれる気持ちに応えたくなったのです。

なぜこれが効果的なのでしょうか?お店にとって「忠実なお客さん」になることで、安定した売上に貢献できます。また、間隔が空きすぎると、また一からの関係に戻ってしまうからです。頻繁に通うことで、私のことを継続して認識してもらうことができます。

毎回通うようになってから、先方から「今日は早いね」「久しぶりだね」とプラスアルファの一言をかけてくれるようになりました。私の「パターン」を覚えてくれたのです。

2.ちょっとした心付けで感謝を表現する

「チップ(心付け)」はニューヨークでは一般的ですが、日本人には馴染みの薄い習慣ですね。「どういう仕組み?」「一体いくら払えば良いの?」「いつでも必要なものなの?」など疑問は尽きません。

一般的には、こちらで働く人のお給料はチップを考慮して設定されていると言われており、特にレストランを始めとするサービス業ではチップはもはや必要不可欠なものです。相場はどんどん上がっていて、現在のニューヨークでのチップの標準は20%と言われています。

もちろん、全てにおいて支払う必要はなく、例えば接客など特段のサービスを受けていないテイクアウト時の場合などは、支払わない、または気持ち程度(おつりを残す程度)でもOKとされています。

私の場合、スタンドで買うコーヒー代は1.50ドルや1.75ドルですが、いつも2ドル札を渡すようにしています。ごくわずかな金額ですが、それだけでも店主にとっては「この人は私の提供するサービスを評価してくれている」というメッセージになっているようです。

大切なのは「感謝の気持ちを形にする」こと。お店の売り上げへの貢献度は大したものではないかもしれませんが、このことで「特別なお客さん」としての認識が生まれ、いくばくかでも店主のモチベーション向上にもつながります。

アメリカ人はチップ以外でも、こうした感謝の気持ちを形で表すことが得意です。例えば、年末や先生の誕生日、先生に感謝をする「Teachers’ Appreciation Week」などの際には、親がギフトカードやプレゼントを渡して直接感謝の気持ちを表現します。

日本ではなかなか慣れない習慣ですし、公立校などのようにそうした贈答品を受け取らない方針の学校も多いですが、一旦慣れてみると、感謝の気持ちを率直に伝えられる、先生も喜ぶ、そしてその結果少しでも先生が自分の子供を気にかけてくれる(あくまでも希望レベルですが)のであれば、何ともクリアで効果的な方法ではないでしょうか。

日本の場合、物質的なプレゼントは難しいとしても、一言、個別に感謝の気持ちを伝えるカードや手紙を渡すことはできますよね。私もまだ日本の学校ではしたことがありませんが、過去やっておけば良かったなぁ、と思います。

3.相手に関心を示す

相手に対し、「人として」関心を持つことが大切です。前回は挨拶に加え、「一言プラスの会話」について触れましたが、一貫して言えるのは「相手に関心を示す」ことの重要性です。

例えば、最近の私の例で言うと、忙しそうな時には「今日は忙しそうですね。頑張ってください!」とか、近隣の工事の音が気になったら「最近騒音がすごくて大変ですね。いつまで続くのかしら?」と声をかけるなどしました。こういう会話をすると、相手は嬉しそうに答えてくれます。ㅤ
また、アメリカではよく、別れ際に「良い1日を」や「良い週末を」とプラスする習慣があります。慣れないうちは相手から言われるばかりだったのですが、最近は自分からそうした声掛けをすることができるようになりました。本当に些細なことですが、相手に対して「希望のある一言が掛けられた」ことで、自分自身も幸せな気分になることができます

 

思いやりが重なると起こる魔法~ブースター効果

お店側の「選ぶ技術」と、お客側の「良い客技術」が重なった時、予想以上の化学反応が起こります。

以前通っていたコーヒースタンドでの出来事です。職場のイベントで大量のコーヒーが必要になった時、ダメ元で「50杯作ってもらえる?」と相談しました。

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そのお店は普段はそういうことはやったことがないようでしたし、普通なら断られても仕方ない依頼。でも、店主は「あなたは私たちにとって良いお客さんだから、やってみよう!」と快く引き受けてくれました。

なぜ引き受けてくれたのでしょうか?それは上記の1〜3のことを私が日々やっていたからではないかと思います。そのお店を大事に思っていたし、日々の積み重ねが信頼貯金として貯まっていたことを実感できた出来事でした。

まとめ:お互いを思いやる関係へ

前回の記事では「選ばれる人」になる技術をお伝えしました。今回は「選ぶ側」としての技術をご紹介しました。

でも、最終的な目標は「選ぶ・選ばれる」の関係を超えることです。

お互いがお互いを大切に思い、それぞれの成功を喜び合える関係。そんな「相互に成長できる関係」を築くことができれば、単なる商取引を超えた、人生を豊かにする出会いになります。

私がこれまでの約8年のアメリカ生活で学んだ最大の教訓は「Give first, and the rest will follow.(まず与えよ、そうすれば後は続く)」でした。

この言葉通り、まずは自分から良い客になる努力をしてみてください。きっと、想像以上の「ブースター効果」が待っているはずです。

やってみよう!

あなたの行きつけのお店で、以下のうち1つでも実践してみてください。

【初級編】
まずはひと言プラスから 挨拶に加えて「今日はいい天気ですね」「新しいメニューですね」など、ちょっとした一言を添えてみましょう。

【中級編】
関心と感謝を形に 新商品を試してみる、知人にお店を紹介する、店主の様子に気を配るなど、あと一歩、積極的に関わってみましょう。

そして、一週間後、お店の人の反応がどう変わったか、ぜひ教えてくださいね。あなたの小さな「GIVE」が、きっと「温かい関係」の始まりになるはずです。

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この記事を書いた人

米・ニューヨーク在住。ストーリーを使った「ストーリートーキングⓇ講座」認定講師。スピーチコミュニティ「伝わる!スピーチ道場」主宰。
こちらのブログでは「ストーリーテリング」、「スピーチ」を中心に、書くことで人の強みを発掘し、話すことで相手の心を掴む話し方、をテーマに書いています。

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